第25回全国老健大会(岩手)

マニュアルについて

マニュアルは業務の流れを時系列で、業務の理由を含め写真等を添付してわかりやすく記載してある。また、業務毎にチェックポイントを作り、自分がその業務を施設の方法に沿った方法で行えているかどうかを確認できるようにしてある。この基準に沿って排泄介助や入浴介助など日々の業務と呼ばれるものに関してすべてマニュアルを作成した。

目的

オリジナルマニュアルを作成した目的は大きく分けて3つある。
1)今いる職員の業務内容・知識の統一を図り、資格・経験の有無に関わらず同じ業務が行えるようにするため。
2)新人教育に使用することで、口頭説明による聞き逃しや解釈の違いをなくし、指導する側の内容を一定にする。
3)当施設は複数の関連施設を所有しているため、関連施設での仕事の基本となる介護技術や介護に対する考え方を統一する。介護技術を統一させることで人事異動を容易にさせ、他部署の突発的な欠員時のヘルプを行いやすくさせる。介護に対する考え方を統一させることにより一体感を強め、法人として質の高い利用者サービスを提供できるようにする。

方法

1)当施設は開設から15年間マニュアルが存在していなかった。存在していなかったためにバラバラになっていた業務内容・知識の統一を図るため全職員にマニュアルを配布。各自確認してもらうことで統一を行う。
2)マニュアルを新人職員に配布し、新人職員に業務の予習を兼ねた講習を行う。1日の流れをマニュアル通りに理解してもらうことで、業務の習得を少しでも早くなるようにしている。未経験新人職員の独り立ち目標を3ヶ月と設定し、この期間はマニュアルを使用しながら育成を行う。
3)当施設2階にて仕事の基本となる知識・技術を習得した未経験新人職員を対象に、異動先でのその後の育成状況や異動後のフロアの変化を調べる。今回は病院への異動について調べる。

結果

1)すでに修得している業務内容・知識を変えることに時間を要したが、以前は行っていなかったこともマニュアルを作成した後は行えるようになった。また、職員の経験・資格の有無に関わらず同じ業務を行うことが可能となっている。マニュアルという明確な基準があることで、業務内容・知識が統一された。
2)マニュアル開始の平成25年度から現在までに6人の未経験新人職員が独り立ちしている。その6人全員が、目標である3ヶ月で独り立ちし職員として働いている。新人職員から、「指導する職員が変わっても教える内容に変化がない」や「理由を説明してくれるためわかりやすい」などの声が上がっている。
3)病院へ異動した職員は1~2ヶ月で独り立ちをしている。この1~2ヶ月は当施設と病院との業務の違いを教えるのにかかる期間である。つまり、仕事の基本となる知識や技術をすでに習得しているために、基本介助に関しては即戦力として動けている。仕事の基本となる知識や技術を当施設と病院とで統一することにより人事異動を容易にすることが可能である。

考察

1)すでに体に染み付いている業務内容・知識を変えることには時間がかかり、職員の業務内容・知識が完全に一致されているとは言えない。また、マニュアル作成後に業務内容の変更が何点か出てきている。そのため、フロア会議など職員が集まる時間を利用し、マニュアルの読み合わせやマニュアルの変更点などを話し合う必要がある。
2)新人職員の独り立ちに関しては、本人たちの努力もあり達成されているため問題ないと考えられる。一方、教える側の職員の限定を極力抑えた結果、教えられる職員が増えた。そのため、教えた職員は新人職員の進捗度を理解しているが、他の新人職員を教えていた職員は別の新人職員の進捗度を理解できていない。新人職員1人1人の進捗度状況を把握しやすくするシステム作り・そのシステムとのマニュアルとの連動方法を考える必要がある。
3)人事交流を盛んに行い、法人全体の介護技術・介護に対する考え方を統一することは重要であると考えられる。今後は介護だけに限らず幅広い職種で考え方を統一させることでさらに一体感を強め、さらにマニュアルに人間学向上に育する項目を入れ人間的なレベルアップも図りたい。そうすることにより法人全体でより質の高いサービスが提供できるようになると考えられる。

まとめ

全職員の業務内容・知識を統一したことで、マニュアル通りに新人職員を教えることを意識すれば、経験が浅くても新人職員を教えることができるようになった。また、経験が浅い職員でも教えることを通じて業務の意味を改めて考えるようになった。教えるためには各業務を理解している必要があり、新人職員を教えることに経験の浅い職員のスキルアップにも繋がっている。
新人職員は、マニュアルにより業務の予習をし、指導を受ける前に業務の知識を入れておくことが可能となり、実際に業務を教わる際に、早い段階でマニュアルの内容と実際の動きが一致し実践できるようになったと考えられる
以前は、当施設から病院への異動を理由に退職してしまう職員が少なからずいた。その理由は「老健で働きたい」「また1からやり直すのは大変」など様々であった。現在は当施設と病院とで人事交流を盛んに行っているため、またマニュアルにより仕事の基本となる部分を統一したため、異動を理由に退職する職員はいなくなった。また、マニュアル導入以前は業務内容・知識が統一されていなかったために介護技術・介護に対する考え方が一定していなかったが、導入後は介護技術・介護に対する考え方も統一され法人全体の一体感も出た。