第15回認知症ケア学会大会
医学的ケアを目指して

目的

著しいBPSD(行動心理症状)を起こし在宅で看ることが不可能となった困難な2事例に対し、老健認知棟ショートステイに緊急入所させ、症状をコントロールし在宅へ帰すことができたので報告する。

倫理的は配慮

本研究で得られたデータは個人が特定されないよう配慮して行うことについて家族に同意を得た。又、施設長に対しても学会発表に関し承諾を得ている。
〈対象および方法〉第1事例は72才男性で、前頭側頭型認知症である。真夏の炎天下を毎日10㎞以上徘徊し、奥さんも一緒に付き添い疲労困憊となり、ケアマネより緊急入所の要請があった。入所時、暴力、放尿、入浴拒否、器物破損等のBPSDは著しかった。医療面では薬物を少量から投与開始し、過鎮静に注意しながら増量した。介護面で、病状を勉強し医学的介護を実施した。第2事例は80才男性で、レビー小体型認知症、入所1ヶ月前から意識障害が出現したため急性期病院受診をするも検査上問題ないと言われ点滴をして自宅へ帰った。その後、食事も殆ど摂れなくなり、全身衰弱を認め寝たきり状態となりケアマネを通し緊急入所となった。入所後、末梢持続点滴とシチコリンH1000mgを連日投与した。

結果および考察

第1事例は、入所15日目位よりBPSDも軽くなり、介護の指示も入るようになった。薬物も減量し、入所後28日に退所し以後デイとショートステイを利用している。第2事例は入所7日目に意識障害が改善し、入所29日目で歩いて退所した。2事例とも少量薬物療法と医学的ケアを行っていくことにより入所可能となった。老健は医療と介護が半分半分の施設であるため、BPSDを伴った認知症高齢者をケアあるには最適な施設であることを再認識した。