平成26年度 第1回職員研修発表会
介護職員のバーンアウトについて 後藤 慎也

はじめに

厚生労働省は、認知症高齢者が2025年には700万人を超えるとの推計値を発表した。2012年の時点では約462万人と推計されており、約10年で1.5倍に増える計算になる。その一方、認知症病棟における介護士のBurn outが問題になっている。Burn outの原因の1つとして利用者家族からの理不尽なクレームが挙げられる。認知症病棟という過酷な現場においての理不尽なクレームは職員のモチベーションを低下させてしまう。そこで当施設では“感謝”をキーワードとし、“感謝”が認知症病棟スタッフにどのような変化をもたらすかを検証した。

目的・方法

今回の検証は平成26年1月より開始した。理事長・施設長の協力を得て、利用者家族に“感謝”の言葉を述べてもらうように説明していただいた。その“感謝”の言葉がスタッフにどのような心境の変化をもたらすかアンケートし、“感謝”の言葉がスタッフの精神的ストレスの緩和に役立ち、Burn outを防ぐ因子の1つであることを調査した。アンケートは認知症病棟全介護スタッフに実施し、回収率は100%である。

結果

アンケート結果から認知症病棟において38%のスタッフが利用者家族から理不尽なクレームを受けたことがあると回答した。クレーム内容は食事介助に関することや利用者ADLに関する事など多岐にわたる。当施設では、平成24年度に7名、平成25年度に2名がBurn outを起こし退職している。ところが、“感謝”をキーワードにした平成26年度は0名である。“感謝”をきっかけに「“感謝”の言葉を頂くともっと頑張ろうと思う」「どんなに苦労した介護でも“感謝”の言葉でやっていて良かったという気持ちになる」などと心境が変化している。“感謝”を述べられることで認知症病棟の全介護スタッフが介護をやっていて良かったと回答している。

考察

今回の検証で“感謝”の言葉がBurn outを防ぐ因子の1つであることがわかった。平成24年・平成25年度で計9名の職員がBurn outを起こし退職したにも関わらず、現在はBurn outせずにいきいきと働いている。それはスタッフが介護という仕事を好きだからであり、その陰にはモチベーションをアップさせる“感謝”の言葉が隠れている。“感謝”の言葉でスタッフは心を揺さぶられ働く活力となっている。施設とは認知症患者の新たな人生を始めるところであり、家族と素晴らしい時を刻むところではないだろうか。利用者にとっての良いケアをするためには、スタッフのモチベーションが大事になってくる。それを維持するためにも、今後も大きな工夫をしなければならない。