平成27年度日本慢性期医療学会
平成27年9月10日~11日
タイトル:慢性期病院で見えてきた目指すべきリハビリのかたち ~その人らしい最期を迎えるために~
筆頭演者:医療法人社団 秀慈会 白萩病院  高沢弘樹(理学療法士)
共同演者:田代里矢子、伊東麻耶、穴見徹、八木翔平、北條博也

はじめに

世界でも類を見ない超高齢社会に突入する日本の高齢化率は、2025年には30%に達すると予想される。核家族化の進行によって同居の家族・介護者がいない高齢者が増加しており、さらには高齢によって症状が重症化し医療行為が必要な方が増加していることで慢性期病院の需要は高まっている。当院では、最期の時を迎える方も多いため、看取りの役割をどのように果たすかが重要となっている。今回、重症患者の離床を進めていく中で、目指すべきリハビリの方向性が見え、セラピストの意識が変化してきたため報告する。

取り組み

当院では、寝たきり状態の患者であっても本人や家族のニーズに合わせて、少しでも離床してできることを行ってもらい、その人らしい最期を迎えるような取り組みを行った。

結果、考察

意識レベルが低い患者も家族の希望に応えて車椅子上での座位保持を可能にし、屋外を散歩出来たことで、家族が大変満足されたケースがあった。本人から直接感想を聴取することは困難でも、患者を想う家族の希望に応えることは慢性期リハビリの役割であると言える。このようなケースを経験したことでセラピストの意識にも変化が見られた。患者が最期を迎えるまでの経過で、どのような関わりができるのかをセラピストが積極的に考え始めた。この意識の変化に伴い、寝たきり状態の患者の離床を促すセラピストが増加してきた。
当院の死亡退院者の割合は、直近2年間で約80%に上り、多くの患者が当院で最期を迎えている。患者や家族の気持ちに寄り添い、当院でどのように最期を迎えて頂くかを考えていくことが非常に重要である。

おわりに

慢性期病院は、ただ死を待つ場ではなく患者や家族の最後の希望を叶え、その人の最期をその人らしく過ごして頂く場である。今後も、慢性期病院でできるリハビリの可能性を信じ取り組んでいきたい。