第26回全国老人保健施設大会(神奈川)
平成27年9月3日~9月4日
タイトル:社内木鶏会の効用 (第3報)~「学ぶ」から「行う」へ~
演者:赤石 光裕

はじめに

医療法人社団秀慈会「萩の里」では、平成24年1月より「社内木鶏会」と呼ばれる多職種の職員による、自主的な勉強会を以下の如く3つ、業務終了後に行っている。
①主任木鶏会(理事長、施設長、役職者) 約20名
②月曜木鶏会(自由参加) 約16名
③若手職員木鶏会(新入職員、20代職員)約12名
※「木鶏」という名称の由来は紀セイ子(セイはサンズイに省)という男が立派な闘鶏を育て、物に動じないその様子が木の鶏の様であったという中国の古典「荘子」からきている。

目的

社内木鶏会の目的は大きく分けて3つある。
1)職員の仕事や人生に対する意識を高め、優秀な人材を育成する。
2)組織内の交流を活発にすることにより、多職種協働を推進し、法人の目標とベクトルを
1つにする。
3)陽明学に由来する「知って行わないのは、未だ知らないことと同じである」という
「知行合―」の思想。実践哲学。

方法

致知出版社より発行されている「人間学」がテーマの月刊誌「致知」(書店では市販されていない)を活用する。担当者が特に優れていると思われる記事を5つ選び、参加者はそれらの中から最も感銘を受けた1つの記事について感想文を書く。当日、参加者は3~4名のグループに分かれ感想を発表、意見交換を行う。その際「美点凝視」という相手の良いと思った点だけを述べるというルールがあり、それにより普段は気付かないお互いの長所を発見し、日々のチームワークが重要な介護の現場において、非常に大切な要素を養う事ができる。

結果

本大会で2年前より社内木鶏会の効用を述べてきた。今回、演者自身が社内木鶏会から参加して、実際に何が変化したかを検討した。
①主任会議において司会(MC)としての参加
以前の私は、2階一般病棟の介護主任としての立場でありながら、フロアスタッフの意見を取り上げ、良い方向にもっていく管理者としてのモチベーション、心の余裕がなかった。しかし、2年前より主任会議後の木鶏会のMCを行うようになり、小グループ(3~4名)での討論をすることで相手の美点凝視が、可能となり結果的に部下の意見を真摯に聞けるようになり、明るい職場とする事が可能となった。
②色々なジャンルの本を読む
時間があれば、歴史書、推理小説、更に人間学を学ぶために論語及び哲学書を読む事を義務づけられている。
③近隣清掃を行う
私達の働く施設の近くに上に高速道路が走り、幅20m、全長4kmの大谷川がある。今年2月より、週1回、スタッフ3~4名で30~40分程度その川の海側2km位を対象にした植え込みの清掃活動を行っている。なぜなら、近隣清掃は人間下座行として人格を高める上で必要な行為だからである。ゴミ袋はいつも3~4袋となり、ビン缶類、電気器具、オムツにまで及びそのあまりの多さに驚いた。

考察

社内木鶏会は3年前から開始し、当初は主任会議の後に行う木鶏会だけであったが、現在は更に2つ増え3つとなり会社全体として取り組んでいる。自分自身にも変化が見られ、他燃性から自燃性への変化に驚いている。
利用者様、御家族、職員に対し、更に「自分だけではなく他者の幸せを願う、思いやりの心」で接する様になった。即ち「利他の心」である。私は、「利他の心」があれば、自分の力を発揮し、周りの人を幸せにできると考える。

まとめ

社内木鶏会の効用は以下の通りとなる。
①主任会議の木鶏会にMCとして参加し、大きな声が出るようになり積極性が増した。
②色々なジャンルの本を読み、人格向上につながった。
③近隣清掃は自己自身を下座におき謙虚になることで、色々な気付きが可能となった。
④地域清掃を行うことは、「地域に根差した施設」であるという老健の理念にも一致している
⑤当施設の離職率は全国平均16%と比べ、4%と低く、木鶏会参加の有用性が示された。