短期入所時問題行動を伴う患者に対する薬物治療の試み
○萩原悠人1,萩原秀男1,大平政人1,小川恵子1,原木茂則1,田村浩臣1
(1介護老人保健施設 萩の里)

目的

年々、認知症高齢者は増加の一途をたどり我国にとっても大問題の一つである。そして現在問題になっているのは、問題行動を伴った在宅認知症患者を介護施設のショートステイに入所させた場合、介護スタッフが疲弊してしまうため何回となくショートステイを利用することが困難となっている。患者家族の負担を軽減するどころか今後さらに問題行動を伴った利用者が増える事が予想され患者家族の負担はさらに大きくなる。今回、我々は問題行動を伴った患者を老健のショートステイ薬物療法を行う事によって問題行動を軽減させ、より多くの利用者がショートステイ可能となるかを検討した。

対象および方法

当施設は100床で、その内一般棟が58床、認知棟42床である。対象患者はH24年4月から薬物療法を開始したH25年3月までに問題行動を伴って認知棟ショートステイを利用した認知症患者である。これら患者に対して薬物療法を施行し各月における薬物療法者のショートステイ人数の推移を調べた。そして各月における薬物療法者一人あたりの月平均ショートステイ滞在日数を調べた。さらに老健で薬物療法を施行しショートステイをした場合の利点、および薬物療法を導入する際の医師、看護師、介護士における問題点等を検討した。

結果および考察

各月における薬物療法者のショートステイ人数の推移では、図1のごとく薬物療法導入した初期では4~5人程度であり看護師、介護士の薬物療法に対する理解度も低くかつ薬物療法に対するアレルギーもあり薬物療法者数も少なかった。そのため、看護師、介護士に対して少しづづ問題行動に対する薬物療法を行うメリットと注意点について勉強会を行うとともに、徐々に薬物療法も理解されH25年2月では9名、3月では10名と増加してきている。 次に各月における薬物療法者一人あたりの月平均ショートステイ滞在日数は図2のごとく、薬物療法を導入した初期では4~5人程度であったがH25年2月は7.4日、3月は12.1日とかなり長く滞在するようになってきた。これにより入所期間も他の介護施設ショートステイより長く入所させることも可能でかつ、月に何回でも可能であると広まり紹介が増えてきている。今後ショートステイも問題行動が伴った患者は老健でみるようにし、問題行動を伴わない高齢者は介護施設のショートステイでみるようにすればかなりの問題が解決されると思われる。 老健で薬物療法を施行しショートステイした場合の利点としては、1)介護士が疲弊しない2)他の患者に迷惑がかからない3)2日3日以上入所出来る。また薬物療法を導入する際の施設側の問題点としては、1)医師である施設長が問題行動の薬物治療に慣れていないこである。少し大変であるが入所している問題行動を伴う患者を24時間診れるため診療所の外来で薬物療法を行うのと違って非常に理解し易い。また、精神科医のサポートを受ければさらに習得も早くなると思われる。2)看護師や介護士の認知症や問題行動に対する理解の不足が挙げられた。さらに薬物療法における過鎮静や転倒を防ぐためにも施設内天秤法を取り入れている。図のごとく使い方は簡単で、例えばグラマリールを使えばグラマリールのところに○を付け、○月○日は朝2錠、昼2錠、夕2錠と記載する。安定してきたら朝○、昼○、夕○と数字のとこに○を付ければよい。非常に実践的であり薬物量の加減にも慣れ、薬による過鎮静も早く対処でき安全なものであるとの理解も徐々に高まってきた。

考察

今現在、全国に老健が3435施設ありこれらの施設で薬物療法が日常的に行える様になれば大きな福音となる。さらに厚生労働省のオレンジプランの多くの課題も老健が中心となって担うことが可能であると思われる。今後老健が認知症介護の中核的存在となれるか検討していくつもりである。