第21回日本介護福祉学会(熊本)

1.目的

「和を以て貴しと為す」この言葉は、聖徳太子が制定した十七条憲法の第一条にある。人々がお互いに仲良く、調和していく事が最も大事な事であるという教えなのだが、我々秀慈会もこの「和」を大変重要視している。しかし、様々な職種、考え方を持つ人間が働く環境で「和」は自然に出来るものではなく、作るものである。そこで秀慈会では、『木鶏会』という人間学を学ぶ勉強会を開いている。この勉強会では、お互いの良い点をコメントし合う『美点凝視』を用い、人の意見に左右されず強く、また、思いやりのある人間を構築すると共に、調和のとれた働きやすい環境を目指している。本論では、この『木鶏会』に各役職者が参加する事で、新人や部下に対する意識や自身の人間性、協調性に変化が起きたのかを考察した。

2.方法

『木鶏会』では、人間学月刊誌『致知』より選択された5つの記事より、1つを選んで感想を発表しグループ内で『美点凝視』を行う。今回、各役職者が参加する『主任木鶏会』のメンバー二十名(医師、看護師、理学療法士、介護士、事務員)にアンケートを実施し、参加者の意識にどのような変化・影響をもたらしているのかを検証した。質問事項は次の通りである。 問1.木鶏会参加メリット 問2.職場でのコミュニケーションで気を付けている点 問3.苦手意識を持つ人物がいるか否か 問4.木鶏会参加後に苦手意識を持つ人物に対し、見方が変化したか 問5.木鶏会に参加してから、新人職員と接する際に気を付けるようになった点の以上5問について答えてもらった。

3.結果

アンケートの集計結果は以下の通りであった。問1については「自分の意見と対立する意見を持つ相手に対し、なぜそう考えるのだろうと相手の言葉を理解する努力をするようになった」など、相手と協力体制をとっていく前向きな姿勢に変わった事が窺える。問2に関しては、「自分が悩む事と同じように、他の職員も悩みながら仕事をしているのだと感じるようになった」「その人の良い所を見る癖がついた」など悩みを共有し前進していく意識が強くなっている。問3では苦手意識を持つ人物がいると答えた職員は半数以上に上った。問4の返答では、「苦手というものは、自分の心が作るものだと感じられるようになり、自分の接し方を工夫する必要がある」など相手を変えるより、まず、自分自身が変わらなければならないと意識に変化している。問5の場合「相手の立場になって指導していく」「共通する目標を持ち、互いに切磋琢磨していく」など教育指導するだけでなく、ベクトルを揃えて互いに成長していこうとする思考に変化している。

4.結論

以上の結果から『主任木鶏会』に参加する事で、様々な意識の変化をもたらしている事がわかった。それは大きく分けて3つに分類される。1つ目は人間学を語り合うことで人生、仕事に対する目標や生きがいを改めて見つめ直し、それに向かって努力をしていくといった自己啓発の気持ちが向上している事が考えられる。2つ目に役職者同士の交流が密になり、リーダー特有の悩みが理解しやすくなり解決に導くことが容易となった。また、部下や後輩に対する意識やアドバイス内容が親身となり対人関係で退職する者がいなくなった。そして3つ目に『美点凝視』という見方から、苦手意識を持つ人物に対しても相手の考えを理解しようとし、お互いを思いやる利他の心が身についたと思われる。以上を踏まえ木鶏会が働きやすい環境をつくる事、また、強い組織を作る上にとても重要な役割を担っている事がわかった。今後も秀慈会では、この『主任木鶏会』を継続し更なる発展へとつなげていきたいと考えている。
(※アンケート内容につきましては、各々に発表許可を頂いております。)