第28回 全国介護老人保健施設大会 愛媛 in 松山

 

タイトル:オリジナルマニュアルの課題と改善~ポケットサイズマニュアルを導入して~
筆頭演者:医療法人社団 秀慈会 萩の里 小島功大
共同演者:原木加奈 田村浩臣 赤石光裕 大平政人 萩原秀男

 

 

【はじめに】

当施設では、平成25年より業務知識・技術の統一のためにオリジナルマニュアルを導入している。きっかけは、当法人の関連施設が、老健、療養病棟(現在は地域包括ケア病棟を含む)、デイケア、デイサービスと多岐にわたっていたため、関連施設間での業務知識・技術の統一と職員交流を行いやすくするためであった。現在は、マニュアルを新人職員に配布することで、ルーチンワークを習得してもらうため、また職員間のルーチンワークの知識のズレをなくすために活用している。

 

 

【目的】

介護士は、介護福祉士として求められるものの他に、日々行わなければならない業務や事務仕事等を含むルーチンワークをこなさなければならない。新人職員は介護士としての知識や技術を習得しながら、同時にルーチンワークも習得しなければならないために、負担が大きくなってしまう。そのため、マニュアルを活用することによりルーチンワークを少しでも早く習得してもらい、介護士としての知識や技術を習得する時間を確保することを目的としている。

 

 

【オリジナルマニュアルについて】

マニュアルには排泄介助や食事介助の方法の基本となるやり方やルーチンワークの手順等が記載してある。マニュアルを介護職員全員に配布することで、先輩職員は新人職員を指導する際の手順書になり、新人職員は自宅等で事前学習・復習することができる。また、介護職員全員が同じものを所有しているため職員間での知識のズレをなくすことができる。

 

 

【課題】

マニュアルはA4サイズで印刷し、フラットファイルに綴り各職員に配布していた。そのため、業務を行っている際に持ち歩くことができず、わからないことがあった時にすぐ調べる・その場で確認するということができなかった。「常に持ち歩く」ということを考慮するとA4サイズのマニュアルでは限界があるということがわかった。

 

 

【改善方法】

従来A4サイズで印刷していたマニュアルをA6サイズで印刷することにした。さらに、従来はフラットファイルに綴っていたが、表紙・裏表紙をラミネート加工することにした。A6サイズで印刷するため、文字サイズや写真を大きくしたため、A4サイズで約130ページであったオリジナルマニュアルが約160ページに増えてしまったが、ポケットに収納し、持ち歩くことは可能となった。

 

 

【結果】

ポケットサイズのオリジナルマニュアルを作成したことにより、マニュアルを「常に持ち歩く」「その場で確認する」という意識がつくようになった。さらに、A4サイズのマニュアルは自宅学習用、ポケットサイズのマニュアルは現場用と用途が明確になり、今まで持ち歩くことが大変でマニュアルをどのように使用したら良いか戸惑っていた新人職員の戸惑いがなくなった。わからないことがあったら「すぐに調べる」ことができるため、ルーチンワークの習得にかかる時間の短縮も行うことができた。

 

 

【考察】

A4サイズのマニュアル導入以前は夜勤までの独り立ちに半年近くかかっていたのが、導入後は3ヶ月に短縮されている。ポケットサイズのマニュアルを本格的に使用するのは今年度(平成29年度)入社の新人職員のためデータはまだ取れていないが、「常に持ち歩きできる」「その場で調べ確認ができる」点、さらにポケットサイズマニュアルを常に持ち歩くことで先輩職員とのコミュニケーションも図りやすくなると事を考慮すれば3ヶ月よりさらに短縮できるのではないかと考えられる。今後どのような変化が生まれたか、さらに情報を収集していく予定です。

 

 

【今後の展望】

利用者と一番近くで接するのは間違いなく介護職員である。医療的なことは看護師との住み分けも必要ではあるが、利用者の急変や病状を的確に看護師に報告できる医療的知識が介護職員に求められるのではないか。当施設では看護師と協力し医療的知識向上のための勉強会を行っているため、その勉強会の内容を上手く加えマニュアルに医療的な内容を加えていく予定である。
また介護未経験の新人職員は認知症の知識もなく認知症の対応を行わなければならない。マニュアルに認知症の基礎知識が載っていれば最初の戸惑いが軽減できるのではないか。医療的な内容と同様、認知症についての内容も加えていき、より良いマニュアルになるようにしていきたい。